リタイヤメント資金 - いくら貯めれば大丈夫?

Last Updated on 2018年5月29日 by admin

リタイヤメント資金、準備していますか?家の支払い、子どもの教育費用と出費は嵩みますが、自分たちの老後の資金はきちんと準備したいものですね。リタイヤメントの資金は何があっても最優先で貯めておくこと、というのが専門家の意見です。なぜ最優先かというと、老後の生活費は足りなければローンを組んで借ればいい・・・とはいうわけにはいかないからです。困ったときは支えあうのが家族ではありますが、親が老後を迎える頃は、子どもも教育ローンや家のモーゲージの返済を切り盛りしているころでしょう。できる限り、負担はかけたくないものです。

今日は、「いったい、リタイヤメント資金はいくら必要なのか?老後のために、いくらずつ貯めていけばよいのか?」を知るためのリタイヤメント・カリキュレータをご紹介します。簡単に計算できますので、ご自分の条件をいれて計算してみてください。

サンプルとして、37歳の共働き夫婦、年収はそれぞれ$60,000のケースを使って、実際にこのカリキュレータを使ってみました。現在、リタイヤメント資金として貯めてある額は$100,000です。将来のインフレは3%と前提。67歳でリタイヤする予定。90歳まで生きる(67歳でリタイヤ後、23年間生きる)予定。リタイヤ後の生活費は、最終収入の70%と見積もり、リタイヤメント資金の運用利回りはリタイヤ前が7%、リタイヤ後は5.5%としました。ソーシャル・セキュリティーの年金も、もらえる予想値を考慮に入れました。具体的な入力は下記のとおりです。

アメリカ 老後 退職 リタイヤメント 401(k) 401k

結果は下のとおり。

アメリカ 老後 退職 リタイヤメント 401(k) 401k
アメリカ 老後 退職 リタイヤメント 401(k) 401k

Resultsのところの英文を翻訳&要約

  • 希望のリタイヤメントを可能にするためには、年々$3,893(月々$324)の積み立てが必要で、これは年収の3.2%にあたります。(雇用主からの401(k)などへのマッチ・アップ積み立てがある場合は、これらの数字から該当額を差し引いて、残りを個人負担)
  • 希望のリタイヤメントを可能にするためには、リタイヤメント時点で$1,265,855の残高が必要(注:これは、想像を超えた額だとびっくりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、年々のインフレ率を考慮しているので、このような額になっています。現在のドル価で言い換えると、この額は$400,000ほどになります)。
  • もし、積み立て開始を1年先延ばしにして来年始めると、年々$4,243の積み立てが必要で、これは年収の3.5%にあたります(注:早く積み立てをはじめようと促している。)

 

青い棒がリタイヤメント資金の伸び(リタイヤ後は、引き出しによる減少)をあらわしています。黄色の棒は、年々リタイヤメント資金から引き出される額をしめしています。

さて、あなたのケースではどうでしょうか?ご希望のリタイヤメントは可能そうですか?ここで、リタイヤメント・プラニングの上で、キーとなってくる要素についてご紹介したいと思います。希望どおりのリタイヤメントを可能にするためにはどのような要素について、配慮せねばならないのか、また、プラニングをすすめるうえで、ときに気をつけねばならない要素はなにか、を見てみましょう。

 

現在の年齢

いったんとってしまった年齢は巻き戻しができませんね。ここでのポイントは、若いうちに準備を始めるということです。お金を貯めるにあたって、もっとも大きくモノを言う要素のひとつは、貯蓄や投資の期間です。この期間が長ければ長いほど、利回りの運用が加速度的に力を発揮します。

$10,000を元手に8%の利回りで運用したとすると、2年後の残高は$11,664になります。この残高は20年後には、$46,000以上になります。リタイヤ資金のために貯蓄や投資にまわす金額がたとえ最初は限られていたとしても、とにかく早めにはじめ、できる限り長く運用する。これがひとつめのポイントです。

インフレ率

インフレと聞くとあんまりよくないイメージがありますが、健康な経済には適度のインフレはつきものです。ただし、投資者の立場からするとインフレは大いに注意が必要なものでもあります。なぜなら、インフレは貨幣価値を下げるので、インフレが高い環境では、せっかく貯蓄したり投資したりして得た資金の相対価値が下がってしまうからです。別の言い方をすると、「インフレは利回りを食う」ということです。表面上得られている利回りが8%でも、もしインフレが5%であれば、実質的な利回りは3%ということになります。

このカリキュレータでInflationの項目の横の?マークをクリックするとわかるように、2000年から10年間の平均インフレ率は2.6%ほどです。実際のインフレ率は年々変わるもので、将来何十年間ものインフレ率を正確に予測することは、どんな経済学者でもできないことでしょうが、ここではだいたい2から4%あたりの数字を使い、「インフレが○%だったらどうなるか」というように数字を変えてみてシュミレーションするといいかと思います。

なお、このカリキュレータでは、年収がインフレ率と同じ率で年々増加していくと想定されています。

 

リタイヤする年齢

「リタイヤするのに十分な資金を貯めるのはむずかしい」という問題に一番手っ取り早い解決策を提供してくれるのは、コレ。リタイヤする年齢を引き上げるということです。60歳の代わりに65歳。65歳の代わりに67歳。67歳の代わりに70歳とリタイヤを先延ばしにすることで、直接的な効果を期待できます。フルタイムで働く代わりに、パートタイムで長く働き続けるというのも有用です。どんな効果があるかというと・・・

  • リタイヤメント資金をより長く運用: リタイヤを先延ばしにすると、リタイヤ資金を引き出して使う年数を縮め、その代わり労働収入を得る期間を増やす。これは自明のことですが、最重要ポイント。リタイヤメント資金が$500,000ある人が、65歳でリタイヤし年間$40,000ずつ引き出したとすると、2年後の残高は$493,344(利回りは8%で計算)。ところがリタイヤを2年延ばして67歳でしたとすると、リタイヤメント資金は手付かずのまま運用されつづけ(利回りは同様に8%)、2年後の残高は$583,200となり、$100,000近くの差となります。
  • ソーシャル・セキュリティーの年金(Retirement Benefits)を最大化: 年金開始は62歳から可能ですが、これを遅らせるほど年金額は増やされます。年収が$50,000の1970年の人を例にとってみると、62歳で開始した場合の年金月額は$1,181、67歳で開始だと$1,772、70歳まで遅らすと$2,244となります。この差は死ぬまで一生の続きますから、通産すると$100,000以上の受給額の開きになることもあります。
  • 福利厚生の継続: 長く働き続けることで福利厚生のベネフィットを継続的に受けることが可能になりますが、その中でも大きいのは医療保険。リタイヤし、自分で医療保険を購入するのと、雇用主を通して加入するのとでは、何千ドルもの差がでるでしょう。言い換えれば、早期にリタイヤすると何千ドルもの追加費用がかかってしまうということです。

 

リタイヤしてからの寿命年数

これは、リアイヤメント資金としてためたもので生活していくことになる年数です。みなさん、何歳まで生きるおつもりでしょう。どんなに計画が得意なひとでも、こればっかりはわかりませんね。現在の日本人の寿命は男性が79歳、女性が86歳であり、アメリカですと男性が76歳、女性が81歳というところです。ただしこのまま医療が進めば将来的には寿命も延び続けると予測され、リタイヤメント資金の計画のためには寿命は90歳と想定するというのが一般的になってきています。女性の場合は95歳を想定したほうがいいかもしれません。資金は使い果たしてしまったのにまだ生きている・・・ということになっても大変ですから、ある程度余裕をもって貯めたいものです。

寿命が90歳だとしたとき、65歳でリタイヤするのなら、25年間がリタイヤしてからの寿命年数であり、貯めたリタイヤメント資金を25年間枯渇しないようにうまく使い続けなければならないということになります。

 

リタイヤしてからの希望収入(最終年収に対しての%)

リタイアした後は、家のモーゲージも残っておらず、子どもの教育費もなく、仕事のために必要だった経費もないという状態が理想ですね。現役時代に比べて、暮らしに必要となる費用は少なくなることを前提にしたうえで、リタイヤ前の年収の何%くらいがリタイヤ後には必要であるかの検討をつけます。

だいたい70%から80%という数字を使うのが一般的ですが、これは現在の収入によっても考慮しなkればなりませんね。現在の収入が$40,000であれば、その80%の$32,000では生活することが困難かもしれません。反対に、現在の収入が$200,000であれば、その70%の$140,000は必要ないかもしれません。

厳密には、短絡的なパーセンテージを使うのではなく、リタイヤ後の月々の必要経費を洗い出し、実際にいくら必要かを割り出すほうがより質の高いプラニングができます。細かく必要経費を計算したい方は、こちらのカリキュレータでリタイヤ前後の経費の比較・検討ができます。

*上記カリキュレータは削除されていますので、こちらを参考にしてください。

https://personal.vanguard.com/us/insights/retirement/tool/retirement-expense-worksheet?lang=en

リタイヤするまでの利回り と リタイヤした後の利回り

利回りは多ければ多いほうがいいのですが、そのためにはより高いリスクをとらねばなりません。リスクと利回り(リターン)の関係についてはこちらをお読みください。実際には、自分の許容できるリスクレベルと必要な資金を貯めるために必要な利回りとを考え合わせ、どのような投資の仕方をすればいいかを選らんでいくことになります。

一般的にはリタイヤまで時間があればあるほど、リスクがとりやすいので結果的に利回りも高くなり、リタイヤしたあとはリスクがとりにくいので利回りも低くなるということになります。いずれにせよ、長期的な計画と定期的なチェックによって、資金運用の目標と実際のパフォーマンスが沿ったものであるかを確認しつづけていくことが必要です。

ここではリタイヤ前は7%、リタイヤ後は5.5%という数字を使いましたが、これもある程度の範囲で上下させてみてシュミレーションするといいでしょう。たとえ、計画どおりの利回りが実現されなくても、リタイヤメント計画が大きく崩れることがないよう、余裕を持った貯蓄・投資を行っていくことが好ましいと思います。

 

ソーシャル・セキュリティーのRetirement Benefits(年金)

通常、10年以上働いたひとであれば、年金を受給することができます。受給資格やどのくらい貰えるかについてはこちらをお読みください。このカリキュレータでは、現在の収入額によって、リタイヤしたときにもらえる年金予想値を自動的に考慮します(Include Social Security Benefits?にYesと答えた場合)。

もし自動的に計算される予想値とは違う値を使いたい場合(たとえば、現在の予想値は将来きっとフルには貰えないだろうと予測し、少し少なめに考慮したい場合など)は、最後の入力欄にマニュアルで具体的な年金(月額)を入れてください。

また、ソーシャル・セキュリティー以外にも企業年金など他の年金が貰える人は、このカリキュレータではそのための入力欄がありませんので(そのようなラッキーな人は年々少なくなっているので割愛したのでしょう)、ソーシャル・セキュリティーの年金と一緒に最後の入力欄に合計額を入れるとよいでしょう。

とくに共働きの夫婦の場合、ソーシャル・セキュリティーの受給開始を夫婦でコーディネートして計画的に行うことで、もらえる年金額の総額を最大化することが可能です。この点は、このカリキュレータで考慮できる範疇を超えていますが、総合的なリタイヤメント・プラニングでは是非考慮したい点です。

 

ふ~、自分が90歳になったとき、「あといくら資金が残っていて~・・・私のリタイヤメント計画はうまくいったわ~」など考える脳ミソがあるのかしら・・・などと将来のしわくちゃな自分を想像してみたりします。計画しても、なかなか計画通りにはいかないものですしね。現在の私たちにできることは、自分のできる限りのことをしておくということに尽きますね。後は祈るばかりと・・・

ご意見、ご質問ウエルカムです。私もまだまだ勉強中ですので、いろいろお教えください。

最後まで読んでくださってありがとう!

 

2 comments

  1. 大変有益なブログ、ありがとうございます。
    「細かく必要経費を計算したい方は、こちらのカリキュレータでリタイヤ前後の経費の比較・検討ができます。」のカリキュレータが今は削除されているようです。もし、同じようなカリキュレータをご存知でしたら、ご紹介いただきたく思います。

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