インデックス投資をはじめる(3):メンテナンス

このシリーズでは今までのところで、とるべきリスクレベル(許容リスク)を決め、それに従って4つの基本となるインデックスファンドを適切な配分で組み合わせて投資をはじめるところまでをカバーしました。

インデックス投資は、基本的につみたてたあとは何もしないほったらかし投資(パッシブ投資)です。しかしながら、少しばかりのメンテナンスが必要です。そのメンテナンスとは、リバランスとリアロケーションです。

リバランス

最適な比率で投資をはじめたのは素晴らしい第一歩です。ただこの最適な配分は時間とともにくずれてきます。なぜそんなことが起こるかというと、それぞれのファンドの成績がまちまちだからです。たとえば株式市場が好調のときは株式ファンドの残高が伸び、対して債券はそれほど伸びないとすると、結果として当初の最適配分より株式比率が大きくなり債券比率が下がります。また、US国内株式が好調で外国株式が不調ということであれば、当初の狙ったUS国内株式比率よりその比率が高くなります。これは、それぞれ運用が進んでいるということで悲しむべきことではないのですが、ただ最適な比率でのアロケーションが崩れるという意味では不都合です。

このずれた比率を、当初の最適な比率にもどしてやる作業をリバランスとと呼びます。リバランスは、3か月に1回とか6か月に1回とか定期的にするのが望ましいです。リバランスには2つの対応のしかたがあります。

ひとつめは、新しく積み立てをするお金で比率が下がっているファンドを買うことで、最適なバランスに戻すやり方です。

もうひとつは、比率が上がっているファンドを売り、比率が下がっているファンドを買って、最適なバランスに戻すやり方です。

あるいは場合によってはそのコンビネーションもあるでしょう。

リアロケーション

リバランスとともに必要なメンテナンスがリアロケーションです。

投資をはじめると、時間経過とともにお金を引き出して使うようになるまでの期間が減ります。当初はリタイヤメントまで25年だったのが、5年後には20年になります。そうすると許容リスクも下がるわけで、それに合わせてリスク高の株式比率を下げて、リスク低の債券比率を上げてやる作業が必要になります。いったんアロケーションを決めたものを、時間経過とともに下がったリスクレベルに応じて再割振りすることを、リアロケーションといいます。

1年ごと、3年ごと、5年ごとなど区切りを決めて、リアロケーションを行うのがよいでしょう。リバランスとともにまとめてやることが多いかと思います。

リバランスとリアロケーションをする方法

リバランス、リアロケーションはすごく難しいことではないですが、ただちゃんと覚えておいて定期的にするというのは面倒なことでもあります。自分でやる代わりに誰かにおまかせするという方法もあります。まとめると以下の4つのオプションがあります。

1)自分でやる

2)これをやってくれる投資アドバイザーを雇う

3)これを自動でやってくれるロボアドバイザーを使う

4)これを自動でやってくれるパッケージファンドを使う

1)は自分でする方法なので、リバランス・リアロケーションには手数料はかかりません。ただ面倒です。忘れないでやらねばならないので、うっかりする人には不向きです。

2)は一昔前はよく使われていました。今でも大口投資家などは使うケースもあります。アドバイザー(人間)を雇い、投資残高に対して0.5%とか1.0%とかいう手数料を支払うことで、リバランスとリアロケーションとやってもらう方法です。アドバイザーはその他、ファンドの選択や売り買いなどについてもアドバイスをしてくれると思います。ただ、このシリーズで前提にしている4ファンド型のインデックス投資であれば、ファンドの選択や売り買いについてのアドバイスはほとんど必要ないので、高い手数料を正当化するのは難しいかと思います。

3)は人間ではなく、ロボアドバイザーを使う方法です。ロボアドバイザーは、いろいろな付帯サービスがついているものからリバランス・リアロケーションだけやるシンプルなものまでいろいろです。バンガードのDigital AdvisorやM1ファイナンスのPortfolio Builderなどは、手数料ゼロ~極小でリバランスとリアロケーションをしてくれます。

4)は、今では広く普及しているターゲットデイトファンドを使う方法です。リタイヤのターゲット年を選ぶだけで、自動的に株式・債券ファンドを組み合わせ投資が始められ、その後のリバランス、リアロケーションも自動でやってくれます。401(k)などでは、ターゲットデイトファンドの利用がほぼデフォルト化しています。インデックスファンドベースのターゲットデイトファンドであれば、手数料もかなり低いので、安心して安価に任せられます。

ターゲットデイトファンドを選ぶ場合

前述のとおり、401(k)などではターゲットデイトファンドの利用が広く浸透しています。401(k)にターゲットデイトファンドがおありなら、それを選ぶのが一番よいように思います。また、IRAなどでも、ターゲットデイトファンドは必ず選ぶことができます。

多くのターゲットデイトファンドはインデックスファンドを使って組まれているので、低手数料のはずですが、まれにインデックスファンドではなくアクティブファンドを使って組まれたものもあります。たとえば、Fidelity Freedom Index 2040 は2040年をリタイヤ年ターゲットとしてインデックスファンドで組まれたターゲットデイトファンドで手数料は0.12%です。これに対し似たようなので、Fidelity Freedom 2040というのもあって、こちらはアクティブファンドで組まれたターゲットデイトファンドで手数料は0.75%とずっと高くなります。前回のシリーズでご説明したとおり、アクティブではなくインデックスファンドを使ったパッシブ投資のほうをお勧めします

ロボアドバイザーを選ぶ場合

ターゲットデイトファンドは、401(k)やIRAなどの税優遇口座で使うには最適です。一方で課税口座で使うには多少注意が必要です。

ターゲットデイトファンドは、いくつかの株式ファンドと債券ファンドがパッケージされたパッケージファンド(Fund of fundsとも呼ばれる)です。バンガードの場合なら、4ファンド型で4つのインデックスファンドが組み合されてパッケージ化されています。

パッケージファンドでは、引き出し時期を迎えファンドを売る段階になったとき「今はUS株式ファンドが値上がりしているから、US株式ファンドを売ろう」とか、「今は株式が不調だから、債券ファンドから売ろう」という個別対応ができません。パッケージ化されているので、パッケージのまま売ることになります。$10,000分売るなら、その中にパッケージされている4つのファンド全部を売らねばなりません。

引き出しフェーズで、市場を見ながら「US株式ファンドだけ売りたい」とか「US債券ファンドだけ売りたい」とかの個別対応をするには、いったんパッケージファンドであるターゲットデイトファンドを、その要素の4ファンドにばらしてやる必要があります。これはターゲットデイトファンドを売り、その内容と同じ個別ファンドを買うという作業で行います、この作業は、401(k)やIRAなどの税優遇口座ではキャピタルゲインが発生しないので問題になりませんが、税優遇のない課税口座では不要なキャピタルゲインを発生させることになります。

よって、課税口座では、ターゲットデイトファンドではなく、バンガードのDigital AdvisorやM1ファイナンスのPortfolio Builder などのロボアドバイザーの利用がよいかもしれません。

4 comments

  1. いつも大変貴重な情報を共有いただきありがとうございます。英語での情報が理解が難しい時があり、こちらのウエブサイトで内容を確かめることができて安心しております。岩崎さんがお勧めの投資に関する書籍(英語でも日本語でも)あれば、ぜひ今後の記事などで教えていただきたいです。ぜひご検討ください。

    1. コメントありがとうございます。書籍の紹介など、今後やらせていただけるか考えてみますね。私の投資の考え方は、あくまで長期パッシブ・インデックス投資なので、案外どこでも出回っていると思います。。。2018年ですが、日本の読者向けに長期投資の本を出版しています。一応ご参考まで。。

  2. はじめまして。
    いつも為になる記事を有難うございます。
    2年前に米国に移住し、50歳を過ぎた今から投資の勉強を始め、ネットでまず用語を学んでいるのですが、英語力の低さや次から次へと出てくる用語に沼にハマっており、ネットで学ぶ事自体に限界を感じています。
    超初心者向けのオススメ書籍がございましたらご紹介頂けますと嬉しいです。

    1. コメントありがとうございます。初心者の方向けの書籍というのを聞かれるのですが、あまり把握していなくてすいません。一応インデックス投資については拙著もありますが。。あとはこのブログの「インデックス投資を理解する」シリーズと「インデックス投資をはじめる」シリーズをお読みいただければ、大筋理解いただけるかと思います。

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