投資ファンドを選ぶときには、「ステマ」に気をつけましょう!ステマというのは、ステルスマーケティングの短縮語だそうです。LISKUL(liskul.com)によると、ステマとは「中立的な立場での批評を装ったり、当の商品と直接の利害関係がないファンの感想を装ったりして行われる。商品の特長の紹介や、評価システム上の評価をつり上げるなどの行為により、多くのユーザーの目に触れさせ、またユーザーの商品に対する印象を上げることが主な目的とされる」ということです。amazonのレビューなども影響をうけています(参考記事 Amazonのレビューって信じられる?)。
このステマ、金融商品にももちろん適用されています。たとえばクレジットカードのランキング記事とか、ベストなローンを見つけるためのサーチエンジンなども、ある意味ステマに入るかと思います。全く第三者的、客観的に書かれているかと思いきや、紹介している商品の会社からリフェラル代をもらっているということはよくあります。投資ファンドのパフォーマンス番付なども同じで、具体的に利回りが表示されランキングがついていると、それだけでそのファンドを買ってみたい・・という思いを起こさせるため、パワフルなマーケティングです。Morningstarなどリサーチ機関として地位のある組織ならその場しのぎ的な、安定的に使えない指標付けはしないと思いますが、それ以外の、とくにファンド会社とかそれを売る販売会社とのコネクションがあるような組織がつくる記事は、ステルスマーケティングの要素が混ざっている可能性が高いのではないかと推測します。
たとえばこんな記事。
トップのInvesco S&P Small Cap Health Care ETFは、2位から5位までのファンドと見くらべてみても、2018年1/1~12/5時点までの1年利回りでも過去3年利回りでも明らかにトップです。こんなに素晴らしいファンドならばちょっと興味シンシンになりますね。
携帯に電話がかかってきて電話口でこのファンドの良さをアピールされても、興味を示さないかもしれない。。。また背広をきたセールスマンからこのファンドのパンフレットをもらっても、読まないかもしれない。。。でもオンラインで自分で調べものをしていたらこの記事を見つけたとしたら、きっと私たちは“おっつ、すごい情報をつかんだ”と思ったりします。これがステマです。
実際このようなファンドランキングというのは、何をどう分類して何をどう測るかでかなり操作ができるものです。売りたいものを上位に持ってくるようにする操作が簡単だとはいいませんが、できないことは全くありません。そして、私たち消費者が気をつけなくてはならないのは、その時上位にいるものが自分にとって必ずしもよいものではない可能性があるということです。
たとえば、このInvescoのETFですが、このETFの5年間パフォーマンスを見てみると以下のとおりです。このランキングがなされたのは2018年の12月5日でしたので(右の黄色マーカー時点)、過去1年間の利回りも、過去3年(左の黄色マーカーが開始時点)の利回りも大きく上がった時点でした。3年間の最初と最後が、かなり最低と最高に近いからです。ところがもしこのファンドをこの記事を見て購入していたらどうでしょう。2018の12月以降2019年の動きを見てください。そのあとの動きは決して芳しいものではありません。この間は、市場全体が横ばい的な時期ではありましたが、それでもたとえば超基本的なバンガードのTotal Stock Market インデックスファンドを購入していた方が値段が上がっている時期です。
こちらの記事(インデックス投資を理解する(3):儲かりそうなものを見つけようとしない!)でもご紹介していますが、バンガード社のあるリサーチがあります。そこでは、ある時点から過去5年間で、最も成績のよかったファンドから最も成績の悪かったファンドにと順番に並べランク付けし、今度は、その時点からの次の5年間も同様に成績がよかったか、同様に悪かったかを調べています。結果は、最初の5年で成績がよくても次の5年では悪くなることも、またその反対のケースも大変頻繁に見られ、限られた期間での成績の良し悪しは、長期的に見たときの恒常的な良し悪しとは相関が低いということを発表しています。つまり、ある期間、すごく利回りのよいファンドだからといって買っても、それが将来的に続きランク上位に入るかというとそんなことは全くないということです。
“3年間の利回りがすごい!“というのは、買う動機としては正当ではありません。また、たまたま見つけたファンドのランク付けを見て、刹那的にファンドを買うのもキケンです。このようなランク付けはステマの可能性が大ですのでお気を付けを。