Vanguard のミューチュアルファンドとETF どちらがいい?

投資市場において確固としたステイタスを確立してきたETF(Exchange-Traded Fund)。多くの人気ファンドが、Mutual FundとETFという二つの形態で提供されています。Vanguardでも、そもそもMutual Fundとして提供されていた人気ファンドのほとんどがETFとしても提供されるようになりました。投資家としてMutual FundとETFをどう使い分けるべきかについて最新情報をもとに考えてみます。

ミューチュアルファンドとETFの基本的な違いから知る必要のある方は、こちらをご覧ください。

ETFを知る - ミューチュアルファンドとどう違う?

さて、この違いを踏まえたうえで、VanguardのミューチュアルファンドとETFを比べます。

たとえばこのふたつ。。

以下のVTSAX(Mutual Fund)とVTI(ETF)は内容的にはどちらもUS株式全体に投資する全く同じ投資ファンドです。違いは、前者がMutual FundでありExpense Ratio(手数料)が0.04%で最低投資額が$3,000である一方で、後者はETFでありExpense Ratioは0.03%で投最低投資額の設定がありません。

Vanguardの人気ファンドはものすごい勢いで投資額が成長してきていますが、スケールが大きくなることでの単価当たりのコスト削減(Economy of Scale)をきちんと投資家に戻すのがVanguardのすばらしいところでもあります。さすが投資家が所有するMutual Company(参考 Vanguardがトクベツなわけーあなたがオーナー!)、コストが下がればそれをファンドオーナーに還元するわけです。2017年時点では上のどちらのファンドもExpense Ratioが0.05%でした。すでに最低安のExpense Ratioだったものが、2020年以降0.04%と0.03%となりました。

また、もうひとつVanguardのおこなった変更がありました。2017年時点ではMutual Fundのなかに最低投資額$3,000のInvestor Share(Expense Ratio 0.16%)と、最低投資額$10,000のAdmiral Share(Expense Ratio 0.05%)という区別がありました。2019年末にこれが見直され、Investor Shareは廃止され、されにはAdmiral Shareの$10,000の最低限度が見直されました。結果は、最低投資額$3,000、Expense Ratioが0.04%のAdmiral Shareのみが残ることになりました。

使い勝手は。。。

ETF=手数料が0.01から0.03%安い

上のような変更(大きな改善)を見たVanguardのMutual Fundは他にもいくつかあり、ターゲットリタイヤメントファンドや基本的インデックス投資に使われる人気ファンドのいくつかがあてはまります。ファンドにもよりますが、最低限度額が低くなり(ふつう$3,000)、Mutual FundとETFのExpense Ratioはどちらも低下傾向ではあるものの、よりETFのほうが低いです。2023年時点では、Vanguardのミューチュアルファンドの平均手数料は0.09%、ETFのそれは0.05%でした。同じ内容のミューチュアルファンドとETFを比べる場合は、Expense Ratioの差はは0.01%から0.03%程度です。

ETF=いつでも売り買いできる

そもそもETF登場の理由は、まるで株を一株から売り買いするのと同じように、いつでも時価でミューチュアルファンドを1シェアから売り買いできるようにするということでした。よって、もし売り買いをいつでも簡単にしたいというニーズがあるなら、ETFを選ぶことになります。

このやり方はデイトレーディングであり、投資というよりは「投機的な利ザヤ稼ぎ」の売り買いにつながる可能性があり、Smart & Responsibleで提唱している「長期的な投資」の範疇ではありませんので、これ以上の議論から排除します。

以下は、長期投資をする場合の要素について考えます。

端数投資ができるようになったETF

以前は、ミューチュアルファンドはFractional Share(端数シェア)での取引ができるのに対し、ETFではそれが不可能でした。たとえば、ミューチュアルファンドであれば「$10,000分○○ミューチュアルファンドに投資」(たとえば1シェアが$57.05ならば、$10,000÷$57.05=175.28シェアを買う)ということができるのに、ETFでは175シェアぴったししか買えず、[$57.05x175シェア=$9,983.75を投資」というように投資額をいちいち計算する必要がありました。

この不便を回避するために、最近では金融機関によって、ETFでも端数シェアを購入できるように変更することがでてきて、Vanguardもそのうちのひとつに加わりました。端数シェアETFが購入できるようになったのは、ひとつETFの使い勝手がよくなったということではあります。しかしながら、以下のようにETFは自動投資ができないという不便さは残っています。

ミューチュアルファンド-Dollar Cost Averagingに向く

さらに、月々自動化して同額を投資したい場合(Dollar Cost Averagingという)に、ミューチュアルファンドなら「$500を月々、○○ファンドに投資(あるいはアロケーションを決めて複数ファンドに自動配分で投資)」と設定しておけば、毎月自動的に投資がされますが、ETFの場合は、一回一回売買取引を行う必要があります。ETFは市場での売買契約に基づくので、都度の取引が不可欠だからです。これは面倒なうえに、忘れがちであったり、ついついマーケットの情報に流されて当初の予定と異なる売り買い行動をしてしまったりと副作用もあります。市場が良い時も悪い時も常に定額をコンスタントに貯め続けるというDollar Cost Averagingを実現するためには、ミューチュアルファンドのほうが向いています。Dollar Cost Averagingについては下記をご参考に。

株式市場の不安定でうろたえないために

株大荒れでもクールにかまえるために

誰でもできる成功する株投資(2)

結論

2017年の分析では、Mutual FundのAdmiral Share(当時の最低投資額$10,000)とETFの手数料が同じレベルだったので、Admiral Shareで投資できる元手があるのならMutual Fundのほうが使い勝手のよい長期投資ができるのではないかという結論でした。

ところが、Vanguardの昨今の企業努力により、ETFの低コストがより顕著になってきました。基本的なインデックスファンドにおいてはETFのほうが0.01から0.03%低手数料となっており、これは投資額が大きくなればなるほど大きな絶対額の差となります。

Dollar-cost averagingで毎月定額を投資し続けたい場合は引き続きMutual Fundが有利であり得ますが、一括投資や年に一度まとまっての投資の場合は、より低手数料のETFのほうが有利となるかと思われます。

17 comments

  1. いつも興味深く拝読させて頂いております。Dollar cost averagingならMutual Fundの方が適切と言うご指摘ですが、理由がよく分かりません。ETFもHoldしておくなら同様にDollor Cost Averagingに向いていると思うのですが。私は、パフォーマンスが全く等しいとすれば、ETFの方が得だと思います。

    1. はいそうですね。Fractional Share対応があって、自動でDollar Cost Averaging投資ができるのなら、ETFのほうがいい場合が大変多いと同意いたします。

  2. はじめまして、昨年からブログ、本も読ませていただいております。
    いつもありがとうございます。

    Vanguardでアカウント開設を試みたのですが、Capital preservation、Income、Growth、Speculationの4種から一つ選択する(後で変更は可能)箇所があり、それぞれ説明記載はあるのですが、Capital preservationとIncomeの違い、GrowthとSpeculationの違いが、なんとなくわかる、でも決定的な違いがわからないようなという感じです。定義はどこにあるのでしょうか。

      1. ありがとうございます。
        この中から、一つでなく、二つ選択ができるようでしたので、
        とにかくやってみます。

  3. 初めまして、いつもこちらのサイトで学ばせて頂いております。
    投資会社についてお伺いさせて頂きます。よろしくお願い致します。

    主人はアメリカ人で、私は日本生まれで、現在はアメリカ市民権を取りました。
    現在、米国に住んでおりまして、これからも米国で暮らして行く予定です。

    この度、主人が退職する事にありまして、毎月の生活費は年金とリタイアメントで賄えるます為、退職金を投資に回したいと思っております。
    またもしも主人が先に死亡した場合でも私が主人のリタイアメントを引き継げます。
    主人の退職金は約60万ドルほどになりまして、
    手数料の少ない投資先にVanguard を選んだのですが、
    他には手数料が安く信頼出来るであろう投資会社をご存知でしょうか?
    現在のところ、Vanguard, Fidelity, に分けて投資しようかと良考えておりますが、
    他にはありますでしょうか?
    出来れば3社ほどに20万ドルずつに分けて投資した方がが良いかと思っております。
    どちらの投資会社が良いかアドバイスを頂きたくメールさせて頂きました。
    よろしくお願い致します。

    1. Vanguard、Fidelityに加えCharles Schwabなどもよいかと思います。
      どちらの投資会社がよいかなどは、やはり個々人の方の希望や状況をお聞きする必要がありますので、コメント欄での応答は避けさせていただきます。
      よろしければ、Quick Adviceなどのサービスをご考慮ください。https://smartandresponsible.com/blog/service_lineup/

  4. はじめまして。
    ミューチュアルファンドについて沢山検索し、このページに辿り着きました。
    非常に勉強になりました。
    本当にありがとうございます。

    日本に住む日本人で、加えて、日本から出たことがないため、このサイトのターゲット層ではまったく
    ないと思いますが、投資信託を始めたいと思い、いろいろ調べるうちにバンガードを知り、
    ETFを知り、バンガードのHPを見るとMutual fundsという始めて見る言葉があり、
    わからない~という中でこのサイトに辿り着きました。

    わかりやすく記載されていて、非常に楽しめました。
    ありがとうございました。

  5. VangurdのETFの手数料が下がっていたのには気が付きませんでした。
    例え0.01%の違いとはいえ、私はリタイアメントも近くそれなりに貯めていますので、計算してみると全体では結構大きな違いになりました。先ほどVangurdに電話して全てMutural FundからETFにConvertしてもらいました。いつもながら、有益な情報をありがとうございました。

  6. 現在、VTSAXを1ミリオン近く保有しています。
    この記事を読んで、手数料を少しでも下げるために、手持ちのVTSAXをETFのVTI変更したいと思いました。
    そうするには、Vanguardのアカウント内で’exchange’という取引をすれば良いのでしょうか?
    その場合でも、VTSAXを一度全て売り、同額のVTIを購入するという流れになるのでしょうか?
    課税面で何か気を付けることはあるのでしょうか?

    今まで投資と言えば購入ばかりしてきており、売ったりexchangeをしたりしたことがないので基本的なこと、特に課税面、が分かっていないのですが、よろしくお願いします。

    1. 横から失礼します。最近同じことをやったばかりなのですが、ExchangeではなくConvertという扱いでした。Vangurdに電話してやってもらいます。Convertは一回限りなどいくつか説明があり、OKであればConvertしてもらえます。この場合は売り買いが発生しないようで、Capital Gain Taxは払わなくてもいいようです。

      1. りんごさん、ありがとうございます!それは知りませんでした。情報共有ありがとうございます!

  7. はじめまして!
    ミューチュアルファンドについて勉強したいと思い、こちらのサイトにたどり着きました。大変勉強になります。
    日本では投資信託を毎月定額または定率で取り崩して引退後の生活費に充てる人が増えていますが、欧米(特に北米)のミューチュアルファンドでも同じ事が出来るのでしょうか。またその際、税金や手数料はどれくらいかかるのでしょうか。ご教示願えれば幸いです。よろしくお願いいたします。

    1. はい、アメリカでも、老後資金として貯めておいた投資信託を月々引き出して使うケースは多いと思います。
      引き出すのに手数料がかかるケースは、通常あまりないかと思います。手数料はあくまで、投資信託のマネジメントにかかるのであって、引き出しにはかからないのが普通です。税金については、その投資口座がどのようなタイプの口座化によります。401(k)やTraditional IRAであれば、引き出した全額が所得税対象、課税口座ならキャピタルゲインだけがキャピタルゲイン課税対象、Roth口座なら非課税です。

      1. ありがとうございます(^^)。近々海外で長期滞在する予定ですので、投資の対象として考えたいと思います。

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