Vanguard のミューチュアルファンドとETF どっちにする?

このブログでも何度か紹介させていただいたように、私は個人的にVanguardが大好きです。Vanguardを創設したJohn Bogleの思想も大好きですし、その後時代を超えて貫いている、低手数料で着実な長期投資へのフォーカスに同意できるところがたくさんあります。Smart & Responsibleでも、お客様の条件があえば、Vanguardのインデックス・ミューチュアルファンドをお勧めすることが多いのですが、最近はETF(Exchange Traded Fund)のほうがさらに低手数料かつ、税金面でも有利だという情報も紹介され、ミューチュアルファンドかETFかの選択で迷う方もいらっしゃいます。今日は、そのあたりを研究してみます。

ミューチュアルファンドとETFの基本的な違いから知る必要のある方は、こちらをご覧ください。

ETFを知る - ミューチュアルファンドとどう違う?

さて、この違いを踏まえたうえで、VanguardのミューチュアルファンドとETFを比べます。

たとえばこのふたつ。。

vanguard total stock market admiral

vanguard total stock market etf

上はVanguardのUS国内株にまんべんなく投資するTotal Stock MarketミューチュアルファンドのAdmiralクラス(Adm)であり、下は同じTotal Stock MarketのETFです。Admiralクラスは最低投資額が$10,000以上が対象で、手数料(Expense ratio)は0.05%です。一方、ETFのほうは最低投資額の設定はなく(そもそもETFというのは1シェアから、自由に売り買いできるためにつくられています=Exchange Tradedの意)、手数料は同じ0.05%です。

このふたつのファンドは別々にリストされていますが、Vanguardの場合、ミューチュアルファンドとETFは、根底では全く同じファンドであり、単に異なるシェアクラスとして売られているだけです。シェアクラスというのは、同一のファンドを異なる買い方(投資額や、購入チャネルなど)をする場合に手数料やその他の条件が異なるため、これを識別するためのラベルです。たとえば、ワインを購入する場合に例えれば、1本ばら売り価格、先行予約価格、1ダースのケース価格、6ダース以上の大口価格などにのような感じでしょうか。

 

ほかにもあります。。。

上にあげたTotal Stock Marketファンドから派生している他のシェアクラスには下記のようなものがあります。下記の三つは、上記でご紹介した一番上のAdmiralクラスと同じく、すべてミューチュアルファンドです。

下記最上段のInvestorクラス(Inv)は最低投資額が$3,000で、Admiralクラスの$10,000に投資の元手が足りない場合に購入します。その代わり手数料は高く0.16%となっています。真ん中ののInstitutionalクラス(I)は、企業など団体を通してまとめて契約する場合のクラスです。雇用主が提供する401(k)などを通して提供されます。よって個人投資家は購入できません。手数料は0.04%です。最下段のInstitutional Plusクラス(Inst Plus)は、団体契約の中でもさらに大口の場合のクラスで、手数料は0.02%というレベルまで下がっています。

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Vanguardのシェアクラス

Vanguardのシェアクラスごとの、最低投資額と手数料の関係は以下のとおりです。

vanguard share class

大元のファンドが同一であるならば、あとはできるだけ手数料をカットして買うことが最適となります。よって、401(K)などを通して購入できるのであれば、Institutional クラスで購入できる場合も多いでしょうから(雇用主の規模によりますので、それぞれの雇用主提供の情報を確認してください)、それで購入するのが一番ということになります。

個人で購入する場合は、Investorクラス、Admiral クラス、ETFの中からどれかを選ぶことになりますが、AdmiralクラスとETFはほとんどのケースで手数料は同じです。つまり投資額が$10,000以上あるのであれば、ファンドの手数料とパフォーマンス的にはどちらを選んでも同じということです。そうなると、どちらを選ぶかはそれ以外の部分の使い勝手ということになります。

 

使い勝手は。。。

ETF-いつでも売り買いできる

そもそもETF登場の理由は、まるで株を一株から売り買いするのと同じように、いつでも時価でミューチュアルファンドを1シェアから売り買いできるようにするということでした。よって、もし売り買いをいつでも簡単にしたいというニーズがあるなら、ETFを選ぶことになります。

このやり方はデイトレーディングであり、投資というよりは「投機的な利ザヤ稼ぎ」の売り買いにつながる可能性があり、Smart & Responsibleで提唱している「長期的な投資」の範疇ではありませんので、これ以上の議論から排除します。

以下は、長期投資をする場合の要素について考えます。

ミューチュアルファンド-Bid/Ask Spreadなし

ETFは上記で述べた通り自由にいつでも時価で売り買いできるという便利さがありますが、この特権には実は払うべきコストがあります。まずは、Bid/Ask Spreadと呼ばれる、売るときと買う時の値段の差です。VanguardのETFの場合、このSparedも低く抑えられていますが、それでも平均0.06%であり、これはミューチュアルファンドにはかからない手数料です。

ミューチュアルファンド-シンプル投資

またETFの売り買いはミューチュアルファンドの売り買いのようにシンプルではないという点も注意です。ミューチュアルファンドは日中に売り買いしても、その日の終わりのファンドの値段(Net Asset Value)で売り買いされます。これに対し、ETFはリアルタイムで売り買いが可能で、買いたい人が多ければファンド自体の値段(Net Asset Value)よりも高い値がつく(Premium)こともありますし、売りたい人が多ければファンド自体の値段(Net Asset Value)より低い値がつく(Discount)もあります。Premiumで買うこと、あるいはDiscountで売ることになれば損ですが、反対にPremiumで売ること、あるいはDiscountで買うことになれば得です。問題は、それを気にせねばならないことです。もう一度先ほどのETFのquoteを見てみましょう。この時点の値段は117.24、横にあるNAV(Net Asset Value)ha116.89となっています。現在Premiumでトレードされています。

vanguard total stock market etf

さらに売り買いのシンプルさについてですが、ミューチュアルファンドは投資額を決めてポンと売り買いできますが、ETFは投資額ベースではなくシェア数ベースで売り買いする煩わしさがあります。$10,000の投資額がある場合、ミューチュアルファンドであれば、「$10,000分○○ミューチュアルファンドに投資」という手続きをすればよいだけで、たとえば1シェアが$57.05ならば、$10,000÷$57.05=175.28シェアを買うことになります。ポイントは、0.28シェアという端数もOKであることです。

一方、ETFのほうは、シェア数単位での取引で端数は不可です。1シェアが117.24ならば、$10,000で購入できるシェア数を計算しなければなりません。$10,000÷117.24=85.30シェアとなれば、「ETF△△ファンドを85シェア分を購入する」という手続きになります。

ミューチュアルファンド-Dollar Cost Averagingに向く

さらに、月々自動化して同額を投資したい場合(Dollar Cost Averagingという)に、ミューチュアルファンドなら「$500を月々、○○ファンドに投資(あるいはアロケーションを決めて複数ファンドに自動配分で投資)」と設定しておけば、毎月自動的に投資がされますが、ETFの場合は、一回一回売買取引を行う必要があります。これは面倒なうえに、忘れがちであったり、ついついマーケットの情報に流されて当初の予定と異なる売り買い行動をしてしまったりと副作用もあります。市場が良い時も悪い時も常に定額をコンスタントに貯め続けるというDollar Cost Averagingを実現するためには、ミューチュアルファンドのほうが向いています。Dollar Cost Averagingについては下記をご参考に。

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とここまで見てくるとお分かりにように、長期投資にはVanguardに話を限る限り、ETFよりミューチュアルファンドのほうが向いています。問題は、Institutionalシェアを買うこともできず、また投資額が$10,000に満ちず個人的にAdmiralシェアを買うこともできない場合ですが、この場合はファンド手数料だけ比較するとETFのほうが魅力です。ただ、しばらく積み立てを続けて$10,000に達すれば、Admiralに乗り換えることができますから、ミューチュアルファンドのInvestorクラスではじめできるだけはやくの乗り換えを目標に、積み立てに励むというのが一番良いのではないかと思います。

3 comments

  1. VanguardのTaxable accountでの運用を検討中で、ETFとinvestor/admiralクラスで悩んでいます。積立投資ではなく、余剰資金がある時にまとめて投資するスタイルです。
    例えば$3000でinvestorクラスのVTSMXを購入、後日更に買い足してVTSMXの合計額が$10,000をこえた時点で、自動的にVTSMXがVTSAXに変更されるということですか? investorクラスで購入したものはずっとそのクラスのままかと思っていました。もし変更されるのであれば、ETFを選ぶ理由があまりないようにも思います。

    例えば将来、Vanguardから他の証券会社にファンドをtransferしたい時、万が一日本に帰国などとなった場合、ETFの方が便利だったりするのでしょうか?
    ETFの方が税金面で有利という話も、Vanguardの場合あまり差がないという情報もあったりして混乱しています。
    Bid/Ask spreadの手数料はリバランスなどでファンドを売買した時にかかるという意味ですか?勉強不足でよくわかりません。
    ちなみにリバランスの手間や手数料(?)はETFとmutual fundは変わらないのでしょうか?

    1. InvestorからAdmiralへのアップグレードですが、自動的にされる場合も多いようですが、ただVanguardはそれを確約していないので、自分でチェックして$10,000を超えたらマニュアルでアップグレードするという姿勢でいることをお勧めします。Vanguardは、”You may be converted automatically
      We periodically review your Investor Shares mutual fund investments to see if you’re eligible for Admiral Shares. If you are, we’ll give you plenty of time to opt out before we convert you automatically.”という表現を使っています。Vanguardの場合、AdmiralとETFは手数料が同じケースが多いので、その場合は手数料を抑えるためにETFを選ぶ理由はありません。
      将来的に他の証券会社にファンドをTransferする場合は、もしTransfer先の会社でそのミューチュアルファンドなりETFなりを扱っていたら、売り買いせずそのままファンドなりETFなりを移籍させることができます(ここまではアメリカの話)。日本ではバンガードのETFは多くの機関が取り扱っているようですが(https://www.vanguardjapan.co.jp/retail/invest-with-us.htm##etfs)、国を超えても移籍できるかは調べ不足で知りません。
      税金面で有利という話も、Vanguardの基本的なインデックスファンドであれば、そもそも税金があまりかからないような仕組みですので、それほど大きな差がでるとは言えないように思います。Bid/Askは、売り買いのごとに関わってきますが、リバランスは年に1回か2回のことですから、頻繁に売り買いを繰り返すのに比べれば、気にしすぎることはないと思います。ETFでは、売る値段がbid price, 買う値段がask priceとなりますが、リバランス自体の手数料は、ETFでもミューチュアルファンドでもゼロです。ただ売る時は、ミューチュアルファンドはドル価格ベースでできますが、ETFはシェア数ベースでしかできません($1,000分売るということができません)。

      まとめて投資する場合でも、売り買いをして利ザヤを稼ぐのでなければ、Vanguardの場合はミューチュアルファンドのほうがリバランスもしやすく良いのではないかともいます。

  2. 丁寧に説明していただき大変ありがとうございます。
    401kを通しての投資しか経験がなく、リバランスも理屈はわかっても実際の手続きはよくわからないので、大変参考になりました。分散投資のためにファンドを幾つか持つことを考えると、とりあえずinvestorクラスで始め、将来admiralクラスへアップグレードする方針でいこうと思います。mutual fundからETFへの変更は出来るようなので(逆は無理)ETFをあえて選ぶ理由もなさそうです。

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