クレジットカードは諸刃の剣です。うまく使えば生活を豊かにしてくれる大変便利でよいもの、いったん使い方を間違えると負債がどんどん膨らむ怖いものです。その差はまさに天国と地獄ともいえるでしょう。アメリカは日本と比べると、クレジットカードの特典もよりよい反面、その利子はより高いので、天国と地獄の差もより激しいともいえます。
その差はどこから生まれるかといえば、クレジットカードに対する私たちの姿勢です。クレジットカードには、使われてはいけません。クレジットカードは、手綱をしっかりと手元につかみつつ、「使う側」にならなくてはなりません。
クレジットカード会社はどうやって儲けているか
相手に呑まれないためには、まずは相手を知りましょう。クレジットカード会社はどうやって利益を上げているのでしょうか。下図は、アメリカのクレジットカード業界の項目別売上高とその比率です。
上の売上高のうち2番目のInterchange incomeのみが、クレジットカードを受け付けたお店側がクレジットカード会社に支払うものです。あとの項目はすべて、消費者である私たちがクレジットカード会社に支払うものです。
私たちがクレジットカードを使い、翌月請求書が来たのに全額支払わないで残高を翌々月以降に繰り越した場合(リボ払いにした場合)、私たちは利子を払わなくてはなりません。それが一番目のInterest incomeです。これがクレジットカード会社の一番の利ザヤです(全体の43%)。
ちょっと銀行残高が減ってしまいやむを得ずクレジットカードからお金を借りたりすると、手数料がとられます。これが3番目のCash advance feeです。責任ある利用ができず、支払いが遅延したり利用限度を超えて使ったりするとペナルティがとられますが、これが5番目のPenalty feeです。
私たちが許容範囲でクレジットカードを使うなら、これらの費用は払う必要はありません。ものやサービスを買うときも、その手数料はお店側が負担してくれます。翌月の請求書がきたらそれを全額支払えば、それ以上は何の手数料も払う必要はありません。
これが天国と地獄の始まりです。払えるだけ使って、すぐ支払いきる使い方、これが賢いクレジットカードの利用の基本となります。
カード会社に儲けさせるのではなく、優待してもらう存在になる
最初に紹介した図表でもわかりますが、カード会社顧客グループを二つの大きなグループに分けています。
グループA:計画的な利用ができないで、手数料を支払ってくれる層(お客がカード会社に、手数料を支払う)
グループB:計画的な利用をするので、特典を出して囲い込みたい層(店舗がカード会社に、利用料を支払う)
一時的にグループAになるなら問題は少ないですが、恒常的になると金利や遅延手数料がかさみ、クレジットカード負債からなかなか這い上がれなくなります。反対に、グループBになるなら、クレジットカード会社に一切お金を払うことなく、特典だけを享受できます。
いってみればクレジットカード会社は、計画的利用ができないグループAから収益を得て、その収益を計画的利用ができるグループBに特典としてシェアし、差額を自分たちの利益とするというビジネスモデルです。クレジットカードは、使われる側ではなく、使う側になりましょう。
使われない! 避けたいクレジットカードの手数料
こういうわけで、できる限りクレジットカード会社には「お金を払わない」のが基本です。以下で、カードの手数料にはどんなものがあって、どう避けるかを見てみます。
1. Annual fees(年会費)
年会費は$50から$600程度まで範囲があります。年会費を課すカードは、大きく2つに分けられます。ひとつは、クレジットスコアがよくない人向きのカードです。スコアがよくないので、敢て年会費を払わないと作れないようなケースです。もうひとつは、クレジットスコアが良い人向けのプレミアムカードで、年会費が高い分、さまざまな特典がついています。
年会費がなくとも十分な特典がついているカードがある一方で、昨今では年会費があるカードが増えています。俗にいうプレミアムカードの種類が増えて、対象となるクレジットスコアの範囲も広がったように思います。クレジットスコアがそこそこよければ、年会費を払えば特典がもらえるタイプです。このあたりは、もらえる特典に対して年会費を払う価値があるかを見極めていくことが必要です。
2. Interest charges(金利)
月々の請求を全額支払いきらず、残高を繰り越す(リボ払い)と、金利がかかります。クレジットカードの詳細にAPR(Annual Percentage Rate)の表記があります。クレジットカード負債は、家や車など担保のあるローンに比べるとずっと高い利子になります。クレジットカードのAPRは変動利子なので、市場によって上がり下がりします。一般的に低くても十数パーセントから高いと25%あたりまで上がります。
毎月必ず支払いきるのがクレジットカードの基本です。たまに、クレジットカード発行後12か月から18か月は金利ゼロというようなプロモーションもあります。これらを賢く使って他のローンを優先させたり、一時期のお金の工面をするのはよいですが、金利がかかるようになるまえに完済するのがよいです。
3. Late fees(遅延ペナルティ)
月々の請求書のMinimum Payment(最低支払額)を払わないとかかる手数料です。Minimum Paymentを支払わないと、通常の金利(上記)がかかる上にこの遅延ペナルティがかかります。Minimum Paymentは支払ったけど、全額は支払わず残高が残っていると、金利だけがかかります。
うっかり遅延ということもあるので、初回は見逃してくれることも多いです。もしもかかってしまった場合は、「アクシデントでもう繰り返しません」と伝えると返金されることもあります。反対に、遅延が長期に伸びると、APRが上がったりもします。さらにはクレジットヒストリーにも悪影響が出ます。すべては、消費者である私たちの姿勢にかかっています。
毎月、無理なく支払える範囲のクレジットカード利用をし、自動支払いを設定して支払い忘れがないようにするのが肝要です。
4. Foreign transaction fees(外国為替手数料)
クレジットカードの中には、旅行中外貨で買い物をしたり、またアメリカに居ながらにしてもオンラインなどで外貨で購入をすると、外国為替手数料が課されるものがあります。使用額の1-3%程度です。
これは、クレジットスコアがよくないと入れないような「良い」カードであっても、課されることがあります。一般にトラベルカードと呼ばれる、エアラインやホテル系の特典がついたカードは、この手数料が無料のことが多いです。
1枚、外国為替手数料が無料のカードをつくり、外貨での利用の時は必ずそのカードで行うというやり方をしている人も多いです。
5. Over-limit fees(限度額を超えた時の手数料)
クレジットカードには、かならず「クレジット利用限度額」の設定があります。これは、利用者のクレジットヒストリーやスコアによってだんだんと上がっていきます。この限度額を超えてカードを利用すると、Over-limit feesがかかります。ただ、この利用は、利用者が「限度を超えて利用すること」を選択許可(Opt-in)しているときのみ可能です。この手数料を防ぐ意味でも、またクレジットの責任ある利用のためにも、まずはこのOpt-inを行わないのが基本です。
順番としては、少ない利用限度額で余裕のある利用(限度より十分低い利用)を繰り返し、月々の返済を継続することで、だんだんと利用限度額を上げていき、その限度額で余裕のある利用を繰り返すのが肝心です。
6. Cash advance fees(現金キャッシング手数料)
クレジットカードで現金を引き出す(正確には、クレジットカード会社から現金を借りる)ことで発生するのがこの手数料です。この機能は旅先の海外では便利で、両替してお金をもっていかなくとも、行った先のATMでクレジットカードを使って現地の通貨が引き出せます。これには、ふつう3%から5%のキャッシング手数料がかかり、さらにその日から利子がかかります。銀行のATMカードで、自分の口座から外貨で引き出すこともできますから、手数料でどちらが優位か比較したうえで使うとよいでしょう。
一方で旅先ではなく、自分の住んでいる生活の中でこのキャッシングを使うのはよくありません。基本は、急に現金が必要になった場合は、貯めてあるエマージェンシーファンド(純生活費の3から6か月分の現金)を使います。カードから借りなくてはならないことは極力避けたいところです。
以上が、できるだけ払わないようにすべきクレジットカードの手数料でした。これらをたくさん払っているということは、「クレジットカードに使われている」ということです。
今度は、クレジットカードを賢く使って得られる特典を見てみましょう
使う! 利用したいクレジットカードの特典
私たち消費者がクレジットカード会社に払うのでなく、反対に私たち消費者がクレジットカード会社から受け取るものが、カード特典です。キャッシュバックなど金銭で直接的に受け取るものから、サービスや特待のような形で受け取るものなどがあります。リワード比較にはこちらのサイトがよくまとめています。
1. リワード
キャッシュバック:カードを利用すると、その数パーセントがキャッシュバックされるもの。カードによって、1~6%の還元率があります。どんなものを購入しても一律でキャッシュバックされるものから、購入するカテゴリーによって還元率が違ったり、月々高い還元率のカテゴリーが変化するようなものがあります。現金で帰ってくるので、一番シンプルなリワードの受け方でもあります。
ポイント還元:カードを利用すると、ポイントがたまるもの。ポイントのつきかたが、購入するもののカテゴリーによって変わるものもあります。ポイントは、商品、現金、ギフトカードなどに変換できます。変換するものによって、ポイントの変換率が変わり、より有利な変換方法を探ることもできます。
マイル還元:ポイント還元と似ているが、ポイントという形ではなく、カード提携のエアラインマイレージでたまるものです。マイルは、エアラインチケットやホテル宿泊などに変換できます。変換するものによって、ポイントの変換率が変わり、より有利な変換方法を探ることもできます。
キャッシュバックが一番基本かと思います。ポイント還元やマイル還元は、還元率と変換率とふたつの計算が必要ですが、キャッシュバックは還元だけです。もらった現金は、なんにでも「変換」できます。現金ですから。
一方で、マイレージやマイルの変換率を極めると、変換するものによっては大変お得な変換法が存在することもあるようです。調べたり探したりが得意な人にはよいかもしれません。
2. サインアップボーナス
最近は、カードを発行されてから何か月か以内に一定のカード利用をすると、50,000ポイントとか80,000マイルとかのボーナスを提供するカードが増えました。ポイントやマイルはその使い方によって、$500から$1,500程度の現金価値があるようです。
このサインアップボーナスだけのためにカードをつくっては、ボーナスをもらうなりキャンセルするという人たちもいるようです。特におすすめするものではありませんが、かといってイリーガルというわけではありません。繰り返すのでなくとも、カードの切り替え時にはボーナスには注意したいところです。
3.レンタカー保険
レンタカーをしたとき、オプショナルで加入を勧められる保険(collision damage waiver とか loss damage waiverと呼ばれる)がありますが、多くの場合、クレジットカードの特典でかなりの部分をカバーします。カードによって特典の範囲もまちまちなのであらかじめの確認が必要ですが、きちんと使えば数百ドル単位でのコスト削減になりえます。
「そのカードでレンタカー関連のすべての費用を払っていること」など条件がありますから、詳細をきちんと読んで利用したいところです。
4. イベントへの特待
予約が殺到するようなコンサートチケットやレストランの手配などを、優先的にできるという特典です。カード保持者のみにしか提供されないような、特別なプログラム(クッキングクラスとかワイン試飲会とか)などに参加できるというような特典もあります。
5. 空港チェックイン荷物
荷物の紛失や、到着地で荷物が出てこず遅延した場合に補償してくれる特典です。エアラインとクレジット会社が合同で発行するカードなどだと、荷物補償に加えて、その他の旅行関連特典が手厚いものが多いようです。
6. 旅行のキャンセル保険
病気や非常事態で旅行をキャンセルすることになった場合、キャンセル不能のエアチケット代を補償してくれるサービスです。もちろん、別途旅行保険を買うことができますが、もしクレジットカードがこの特典を提供していれば、旅行費用をカードで支払うだけでこの特典が受けられます。
7. エクステンデッド・ワランティ
メーカーワランティが期限切れになった後でも、クレジットカード会社が引き続き、一定期間ワランティを提供してくれるサービスです。冷蔵庫やラップトップ、TVなど値の張るものは特にカードで購入して、エクステンデッド・ワランティを確保します。お店のすすめるエクステンデッド・ワランティは買う必要がありません。
8. プライス・プロテクション
何かを購入した後で、その同じ物が安く売られているのを見つけた場合、カード会社がその差額を返金してくえるサービスです。購入後の有効期間が定められています。購入はそのカードでする必要があるうえ、通常購入後、商品の登録が必要な場合が多いです。
9. リターン・プロテクション
返品したくても、店側が返品を受け付けない場合に、カード会社が代わりに返品受付してくれるサービスです。購入後の有効期間が決められています。
クレジットカードは 使われず、使う側になりましょう!