リタイヤメントプランの活用(3)ー401(k)かIRAか

リタイヤメントのための長期投資には、ぜひ税優遇のあるプランを利用したいものです。それらには、大きく分けて職場で提供されるリタイヤメントプラン(401(k)が主流)個人で加入するプランであるIRAがあることを見てきました。たくさん積み立てる余裕のある人は、401(k)とIRAは併用しそれぞれ最大限まで積み立てるとよいでしょう。一方で、限られたお金しか積み立てられない場合、401(k)を優先すべきかそれともIRAを優先するかは考慮が必要となります。それぞれの長所を比較してみましょう。

401(k)のいいところ

1.積み立て上限(Max Contribution)が高い

401(k)に積み立てることができる上限額はIRAの上限額の約3倍です。50歳以上のキャッチアップ積み立ても401(k)のほうがずっと大きいです。IRAだけの積み立てではリタイヤメント資金を十分に貯めることは困難な場合もあるかもしれません。どの程度の積み立てが必要か、どの程度の積み立てが可能かの両面から、どちらを使うか、両方使うかなどを考えていきます。

2.雇用主からのマッチング積み立て(Matching Contribution)

401(k)では、雇用主からのマッチング積み立てが受けられることがしばしばです。401(k)は法律の範囲内で、雇用主が運用ルールを決められるので、マッチングの額やルールは雇用主によりまちまちです。典型例でいうと、「雇用者がする積み立て額の50%を給与の6%を限度としてマッチングする」というようなケースが多いです。たとえば年収が$80,000の場合、本人が年に$9,600以上積み立てておれば$4,800($80,000×6% かつ $9,600×50%)を、雇用主が積み立ててくれるということです。これは、まさにフリーマネー、もらわない手はありません。一方IRAでは、このような雇用主からの援助はありません。最大限のマッチアップがもらえるように、401(k)への積み立てを最優先で行います。

3.手数料が免除・軽減されることがある

まったく同じミューチュアルファンドに401(k)を通して投資した場合と、IRAを通して投資した場合、手数料が違うことはよくあります。たとえば、大きな会社の401(k)プラン経由で購入すれば、個人がIRAなどを通して投資する場合に比べ、ファンド運営の手数料が大口団体割引で極安というケースもよく見ます。自分の401(k)プランにはどのような投資の選択肢があり、手数料はどのくらいか、それは個人的に投資する場合より有利なのか、そうでないのかを把握しておくといいでしょう。

4.ローンが受けられる

雇用主によって運用ルールは違いますが、一般的に401(k)からはローンを受けることが許されている場合が多いようです。これに対し、IRAからはローンを受けることはできません。Roth IRAの元金はいつでもペナルティなしに引き出すことができますが、これはあくまで資金の引き下ろしであってローンではありません。人生でちょっとお金がいるという局面で、ちょっと借り入れをしたいというような場合には便利です。ただし、あくまで計画的に。借りるわけですから、ちゃんと返す必要もあります。基本的にはローンは使わないのがベストです。

IRAのいいところ

1.投資媒体の選択肢がたくさんある

401(k)は法律の範囲内で、雇用主が運用ルールを決めますので、比較的たくさんの投資媒体が提供されている場合もあれば、非常に限られた選択肢しかない場合もあります。いずれにせよ、あらかじめ用意されたファンドしか選ぶことができません。

これに対し、IRAでは比較にならないほど多種多様な選択肢から選ぶことができます。401(k)で提供されている選択肢のうち、投資内容や手数料などの面において、自分のニーズに合うものが見つかれば問題ありませんが、そうでない場合は、IRAを通してもっとぴったりのものを見つけることが必要かもしれません。

2.手数料が低く抑えられる可能性がある

とくに小さな会社の401(k)などでは、大きな401(k)プランなどに比べて、プランのアドミニストレーション費やファンド数料などが非常に高い場合があります。そんな場合は、401(k)よりもIRAを通して、手数料の安いインデックスファンドなどに投資したほうがずっといいことになります。繰り返しますが、401(k)は雇用主により条件がまちまちですから、自分の401(k)プランにはどのような投資の選択肢があり、手数料はどのくらいか、それは個人的に投資する場合より有利なのか、そうでないのかをちゃんと理解しておきましょう。

4.エステート・プラニング(相続対策)に有利(Roth IRAの場合)

401(k)やTraditional IRAは73歳を超えると最低引き出し額(Required Minimum Distribution)を引き出さねばならないというルールがありますが(401(k)の場合は、73歳になってもまだ労働しておれば、引き出し開始をリタイヤ時まで延期可)、Roth IRAはその必要がありません。まったく手を付けず、そのまま子どもにお金を残すことができます。子どもは、税金を払うことなく資金を使うことができます。

5.ソーシャル・セキュリティ年金にかかる税金を低くできる(Roth IRAの場合)

老後、401(k)からの引き出し額やTraditional IRAからの引き出し額は、「収入」として数えられ、所得税がかかりま。それに加え、増えた収入のせいで、ソーシャル・セキュリティ年金にかかる所得税を引き上げるという副作用もあります。言い換えると、401(k)やTraditional IRAからの引き出し額が多いと、ソーシャル・セキュリティー年金への課税が多くなるということです。

これに対し、Roth IRAの引き出し額は「収入」には数えられず所得税がかからないうえ、ソーシャル・セキュリティ年金にかかる税金を低く抑える効果があります。老後に支払う税金をなるべく抑えるためには、401(k)、Traditional IRA、Roth IRAやその他の投資プランからの引き出しをうまくコーディネートし、引き出しのタイミングを計ることが必要になります。この点では、Roth IRAの利用価値は高いといえます。

こんなふうに、それぞれの状況に応じて使い分けをしていくことになります。

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