株も債券も値下がりした投資ポートフォリオ これからどうなる?

昨年2022年は投資をしている者にとっては厳しい一年でした。長期投資をしている人が使っている基本的なインデックスファンドも、もちろん下落しました。US Total Stock Indexは20%値を下げ、US Total Bond Indexは15%値を下げました。「株式が値が下がるのはわかるけど、債券まで下がるなんて!」、「債券がちょっとくらい値下がりするならわかるけど、株式なみに値下がりしたのはいったいなぜ?」という声が聞こえてきます。

高リスク・高リターンの株式に、低リスク・低リターンの債券を混ぜることでリスクを下げるというのは投資の基本的考え方です。リスクを下げるために買っていた債券が、こんな大きな値下がりを記録するとは、多くの人にショッキングなことでした。なぜこんなことが起こったのでしょうか?今後投資を続けていくにあたって、何か考えを変えなくてはならないところがあるのでしょうか?

2022年という特殊な年

ふつう一般的には、債券は株式と異なる、つまり逆の値動きをするとされています。株式市場が不調であれば、債券市場は好調という具合です。これによって、株式に投資しているリスクが中和され、コントロールされるわけです。

株式市場が落ち・・・

まず株式の方は、2020年のコロナ期間の初期にいったん下がったものの、その後大きく値上がりしました。2022年はその値上がりに対する調整があり、年初に比較すると年末には20%近く値下がりしました。株式市場の不調がありながらも、ちまたの消費者物価はどんどん上がり、2022年は年間通じて7%~9%というレベルのインフレ率を記録しました。

株式ファンド 値下がり

金利が上がり・・・

このインフレ率をコントロールするために、Federal Reserveは2022年中全部で下表のように7回の利上げを行いました。トータルで4.25%の利上げで、2022年当初には0.25%だったFed Fund Rateが2022年末には4.50%まで上がりました。実にこのレベルの利上げは40年ぶりだそうです。

金利上昇

債券市場が落ちた・・・

これこそが債券価格の値下がりの原因です。2022年の一年を通じての金利上昇とともに、債券市場は15%の値下がりを経験しました。市場利子と債券価格は直接的な関係があるからです。

債券 値下がり

市場利子と債券価格の関係

市場利子と債券価格は逆相関の関係です。利子が上がれば債券価格は下がり、市場利子が下がれば債券価格は上がります。これは確率的、一般的な話ではなく、数的公式でそうなっているもので、必ず起こることです。

金利上昇の場合

たとえば、2%の利子が付いた債券があったとしましょう。それを年初に$1,000で買いました。その債券は、毎年2%ずつの利子を必ず生んでくれます。ところが市場金利が4%に上がりました。今では簡単に4%の利子が付いた債券を買うことができるようになりました。新しく投資をする人はその4%の債券を買えばよいのです。一方で、すでに2%の利子の債券を持っている人はどうでしょう。今や2%の利子の債券を買いたい人はほとんどいません。そこで2%の債券はもはや元本の$1,000で売ることはできず、ディスカウントでしか売れないことになります。こういうわけで、利子が上がると、すでに発行されている債券の値段は下がるのです。

金利降下の場合

反対のケースを考えてみましょう。市場利子が1%に下がったとします。もはや、市場では利子1%の債券しか買えません。こうなると、2%の利子が付いた債券はみなが欲しいことになります。2%の利子が付いた債券を売るならば、元本の$1,000よりも高い値段で売れることになります。

この値段が上がる、下がるというのは、持っている債券を売ったら・・・の話です。値段が上がったからとか下がったからといっても、売らないでそのまま持っているのであれば何の関係もなく、これまで通り2%の利子を受け取り続け、債券が満期になった時には元本の$1,000を返金してもらっておしまいになります。

40年ぶりのインフレ高騰に対抗するための連続した値上げが、債券価格を大きく下落させたわけです。

こんなわけで、2022年は株式も下がり、債券も下がり、しかもインフレで物価はどんどん上がっりました。投資家としても踏んだり蹴ったり、消費者としても踏んだり蹴ったりの苦しい年となったわけです。

2023年以降いかに?

ではこれから、どうなるのか。今後インフレがどう推移するのかは誰にもわかりませんが、最終的にインフレ率のターゲットとされる2.0から2.5%程度が実現されたときに、Federal Reserveは利上げをストップするはずです。今後のリセッションを心配する声も聴かれていますが、経済がリセッションに突入すれば、Federal Researveは経済活性を狙い利下げに踏み切ることもあるでしょう。そうなれば債券価格は上がることになります。

もし市場利子が下がらず当面値戻しがなかったとしても、現在の高利子での債券投資は大変に魅力的です。債券インデックスファンドはこの高金利での新しい債券を逐次取り入れているので、投資家も高金利を享受することになります。

債券ファンドのパフォーマンスがさんざんだった過去を見て、今後債券を持ち続ける理由があるのか、今後の投資で債券も含める理由があるのか・・・を迷う言葉も耳にしますが、2022年に比べれば今後の債券市場は明るいはずです。

今まで通りがベスト

こう書いてくると、「では今のうちに債券ファンドを買っておこう」という考えが浮かぶかもしれません。ただ、これはマーケットタイミング(機を見て、安い時に買い、高い時に売ることで利ザヤを稼ぐ方法)であり、長期パッシブインデックス投資の基本からははずれるものです。

市場の状況にかかわらず、債券ファンドを買うのは、その必要があるから買うべきです。現在の高い利子や将来の値上がりを目当てに、現在持っている株式ファンドを売って債券ファンドを買ったり、あるいは現金を積み立てるときにあるべき比率よりも多く債券ファンドを買ったりすることは、本来あるべきリスクレベルから株式・債券配分がずれることになります。これは、よくないことです。

つまるところ、あなたがすでに投資目的を明確にし、リスクレベルを設定し投資を始めておられるのなら、今まで行ってきた投資方法を何ら変える必要はないということです。今まで通り、リスクレベルに応じた配分で債券投資を継続し、また引き続き積み立てればよいわけです。

市場が良くても悪くても、いったん設定した投資法は継続する(目標の変更がない限り)ということです。

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