学生ローンにみる アイビー・リーグとサブプライム大学の差

高いカレッジ費用。なんとなれば学生ローンを借りればOK・・・でしょうか?学生ローンはここ数年ですごい勢いで増えています。アメリカ世帯のうち学生ローンを抱えているのは2010年には19%になりました(2007年では15%。Pew Research調べ)。2011年卒業の学生のうち、学生ローンのある人の平均負債は$26,244だそうです(US News調べ)。カレッジは将来への投資ですから、少しくらい借りても後で元が取れればOKですが、どれくらい借りなければならさそうか?どうやったらなるべくローンは組まないでいられるか? ある程度イメージをつかんでおいたほうがいいでしょうね。。

 

サブプライム大学

2011年の卒業生の中で、平均ローン残高が一番多かった大学はカリフォルニア州のLa Sierra Universityでした。68.4%の学生にローンがあり、平均負債は$54,885です。ジョージア州のClark Atlanta Universityは、94%の学生にローンがあり、平均負債は$47,066。ノース・カロライナ州のJohnson C. Smith Universityは、学生全員(100%)にローンがあり、平均負債は$46,673でした(US News調べ)。

これの大学はU.S. News のBest Colleges 2013 rankingsで、ランキング非公表(ボトム25%)となっている大学です。「カレッジは将来へのインベスメントである」ということばを信じて、「頭金」なしでローンを組んで大学に行ったものの、その後は負債ばかりが残り後が続かないケースが見て取れます。おそらく多くのローンは、条件のよいフェデラル・ローンではなくて、利子も高くペナルティも多いプライベート・ローンでしょう。不動産にたとえれば、ネガティブ・エクイティの(家の価値よりローンのほうが多い)物件。借りたローンは、サブプライムに似たものがあります。「大学に行ってモトがとれるか - 大学っていい投資?」で大学のROIを比べましたが、たとえばClark Atlanta UniversityのROIは最低の「15%以下」でした。他の2校についてはデータがありません。

たいした審査もなく借りられたモーゲージ・ローンのおかげで、(本当は買えない人までが買ったので)不動産価格はどんどんつりあがっていったのと同じように、比較的簡単に借りられる学生ローンのおかげで、(本当は払えない人まで払えるので)カレッジ費用も底なしに上昇中。そう不動産バブルははじけても、わたしたちはカレッジ・バブルの真っ只中!「不動産はいい投資」のはずのように、「カレッジもいい投資」のはず・・・いくらお金を借りたって、元はとれるに決まっている・・・はずでしょうか?サブプライム大学でもそうでしょうか?

 

白黒二色ではない

サブプライム大学はちょっと~???だけど、それ以外ならば大丈夫でしょう・・・と思いますか?いやいや、物事は白と黒だけではないですからね。。きっとその中間にはさまざまな明度のグレーがあるのでしょう。そこでちょっとこんな表をご紹介します。

New York TimesのStudent Debt at Colleges and Universities across the Nationと題されたこのチャート。(余談ですが、インタラクティブ・チャートにおいてはNew York Timesはピカ一です。カレッジとは関係ありませんが、Buy vs. Rentもなかなかのすぐれもの。見てみてね。。)さてさて、このチャート、横軸はカレッジ費用、縦軸は卒業時の平均学生ローン負債で、アメリカの各大学をプロットしています。

学生ローン 授業料 大学 アメリカ カレッジ

ブルーは州立、オレンジは私立。サークルの上にカーソルを持ってくると大学名がでます。特定大学を探したければ、上のサーチ・ボックスに名前を入れます。サークルの大きさは、大学の大きさ(学生数)。わたしたち消費者側からすると、なるべく下のほうにある大学(ローンなしで卒業しやすい大学)が好ましいことになります。

右下のコーナー近いほど、カレッジ費用は高いのに学生ローンは少ない大学であることを示しています。右下はほとんど、アイビー・リーグや私立のトップ大学です。さきほどのサブプライム大学と対照的なところに位置する大学です。

そして表には、サークルが四方八方に分散していますね。カレッジ費用が高くて学生ローンも多い大学もあれば、カレッジ費用が安いのにローンが多い大学もあります。さすがに州立大学は私立に比べてカレッジ費用が安いのは明白に見て取れますが、だからといってその差は学生ローンの大きさとはあまり関係がないのも見て取れます。アイビー・リーグとサブプライム大学の中間には、さまざまな明度のグレーが存在するということです。

 

どう使うこのチャート

学生ローンを組むか組まないか、これは最終的には個人レベルの問題です。このチャートでローンが多い大学を選んでも、ふんだんに蓄えがあるのならローンを組まずして卒業することはもちろん可能です。ただ、このチャートの示唆するところは、「学生ローンが多い大学は、ファイナンシャル・エイドやスカラシップが少ないか、あるいはエイドをもらえたと思ったが中身を見てみてら学生ローンだった・・ということが多い大学である」といことです。このあたりに、大学の教育と学生の健全さに対する「姿勢」が現れるような気がします。

アメリカ大学の学費 - 大学別コスト一覧表」 でFinancial Aid Pledgesに参加している大学というのをご紹介しましたが、Pledges参加大学のほとんどは、上のチャートで下半分に位置しています。つまり、学生ローンを膨らますことなく学生を卒業させようと努めている大学ということになります。

アプリケーションを出そうとしている大学はこのチャートでどこに位置するのかをみて、その大学の姿勢を確認しておくことは、大学選択においても、エイド申請においても、エイド・パッケージの吟味においてもきっと役に立つことでしょう。

…それともうひとつ。。大学だけが選択肢ではないことを知ることです。大学にいったから安泰と信奉するのではなく、子どもひとりひとりに合った道をともに探していく・・・そんな親になりたいものです。

2 comments

  1. >大学にいったから安泰と信奉するのではなく、子どもひとりひとりに合った道をともに探していく。。
    本当にそうなんですよね。また晴れて大学を卒業出来てもすぐに高額の学生ローンの返済が待ち構えているのが現状なんですよね。
    友人の子供は有名私立大を卒業したのに就職難+就職してもお給料が生活費で消えて行き学生ローンまで返済する事が出来なくて、親が仕方なく子供のローンを払っていました。
    私が勝手に金持ち父さんと呼んでいる知人は、親が子供の大学の授業料を払うと子供は勉強しないから絶対払ってはいけない!と言っており、現に彼の息子は父親から無利子でお金を借りてアイビーリーグを3年で卒業しました。
    ウチの息子の通う公立大は授業料も安いので大半は本人が夏休みなどのアルバイトで支払い、足りない分を私が無利子で貸し出し卒業後に返済してもらうというようにしています。
    まあ息子は3年で卒業は無理ですが、自分が授業料と生活費を払うという自負のもと、今のところ単位を落とさず頑張っているみたいです。

    1. そうかあ、それ考えさせられるポイントですねえ。ローンで社会人の一歩をつぶしてしまうのはかわいそうだけど、反対に親が全部払って「6年で卒業すればいいや~」思考になっても子どものためでなし。やっぱ、年齢に応じてそれなりの責任感を与えていくことで、育てていくってことですか・・・親も考えないといけませんね!

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