ファンドはいくつかの投資会社に分散投資がいい?

“ミューチュアルファンドやTFを持っていますが、ひとつの会社にまとめるとリスク集中しませんか?”、“リスク分散のために、いくつかの金融機関にばらけて持った方がいいですよね?”というご質問をお受けします。“株でもなんでもひとつに決め打ちする代わりに、いくつかに分散する・・これって基本でしょ?“という意見も。少し前には、投資口座の整理 - まとめて管理をラクにする!という記事を書きましたが、”本当にまとめてしまってもいいのでしょうか?“という不安も。結論からいいますと・・・ひとつにまとめてしまって問題はありません!

なんでもかんでも分散はダメ

リスク分散という言葉は、最近では投資をする方のなかでもだんだんと根付いてきた言葉です。ひとつがダメになっても他が大丈夫なように、いくつかにばらけさせるという概念です。しかしながら、なんでもかんでも複数に分散したほうがいいかというとそうではありません。たとえば、以前にも以下の記事でご紹介しましたが、ファンド数は多いほうがリスク分散がされていいとは限りませんし、組み合わせを間違えると複数ファンドを持つことでかえってリスクが集中してしまうこともあります。

正しく投資を理解する – 投資ファンドの種類はいくつか適当?(2)

ターゲットデイトファンドの間違った使い方はキケン

ファンドを置いておく金融会社も同じように、複数にばらしたからといって大したベネフィットはなく、かえってハンドリングが大変になるという欠点のほうが大きくなります。それどころか、思い切ってひとつにまとめたほうが管理と計画が格段に楽になるというベネフィットが大きいです。

投資口座の整理 - まとめて管理をラクにする!

でも金融会社が倒産したら?

リーマンブラザースの破たんの記憶は、なかなか消し去ることはできませんね。同じことが自分のIRAを置いている会社に起こったら、私のリタイヤメント資金はどうなるのか・・・誰もが不安に思って当然です。

しかしながら、金融機関に託しているミューチュアルファンドやETFは、あくまで投資家である顧客の持ち物です。Vanguardでファンドを持っていても、Charles SchwabでETFを持っていても、どちらもミューチュアルファンド会社やブローケージ会社の持ち物ではなくて、所有者はあくまで投資家です。もしも、それらの金融機関が経営破たんを起こし、返済できない負債が膨れ上がってしまっても、その負債を返済するために投資家の財産であるファンドやETFが使われることはりません。投資家が所有しているファンドと、そのファンドの運営・維持・管理を託している金融会社とは、法的に別々の存在なので、金融会社の経営難のためにファンドの資産があてられるということはないのです。

金融機関がもしも経営破たんを起こして存在がなくなったとしても、ファンドやETFは存在し続けます。ファンドやETFの中には実際の企業の株式や債券が入っており、それらの価値がなくなるわけではありません。ファンドやETFは存在し続け実質的な価値を持ち続けるのです。金融機関がビジネスを停止するような場合は、ファンドやETFはそのままの形で別の金融機関に移管することができます。

SIPCはブローケージ口座のため

FDICやSIPCという金融資産保護のしくみについてご存知の方も多いでしょう。FDICは銀行破たんのときに預金を保護しますが、同じようにSIPCはブローケージ口座を保護します(金融機関が つぶれたら・・・?)。金融機関が経営難のためLiquidation(業務清算)が必要になった場合は、上で書いたように問題なくファンドやETFは投資家に戻されることが多いですが、もしも何か問題があった場合は、SIPCが関わります。SIPCはできる限り迅速に投資家のファンドやETFなどを金融機関から引き上げ投資家へ戻すことに努めます。これは現金での「保証」ではなくて、あくまで投資家が持っていた投資ポートフォリオの中身(ファンドやETFや株など)をそのままの形で戻すことを目標にします。もしも投資家の投資資産のうち、金融機関から引き上げることができず投資家に戻すことができないものがあった場合には、SIPCは一人$500,000(ただし現金はこのうち$250,000まで)を限度にSIPC自体の資産を使って、戻すことができない投資媒体を購入し、そのうえで投資家に戻します。

401(k)はトラストで守らています

SIPCは上に書いた通り、ブローケージ口座を保護します。

401(k)や529はブローケジ口座を介して購入しないので、SIPCの対象にはなりません。ブローケージ口座を介さないで購入するとは、直接ファンド会社からファンドを購入するということで、毎月定期積み立てをする401(k)や、まとまったお金を直接ファンドに投じる529などがその形態です。SIPCの対象でないから心配する必要があるかというとそうではありません。これらのファンドは、そもそもファンド会社の管理下にはなく、トラストとして別組織の管理下にあるので、SIPCの保護が必要ないからです。ファンド会社が経営難になって、ファンドの資産が流用される危険性がそもそもないことになります。

たとえばVanguardはつぶれるか

このブログでもよく話題に上るVanguard。実際、つぶれることってあるでしょうか。つぶれることは、もちろんないとはいえません。ただリーマンブラザーズのようなつぶれ方はちょっと想像がしにくいかと思います。リーマンブラザーズは、会社自体がリスクを無視した投資をしたために破たんしました。顧客から預かっていた投資ファンドがうまくいかなくなったからではありません。Vanguardはファンド運営、売買、維持、管理業務を行っていますが、これらはサービス業務が専門で、リーマンのようにインベストメント・バンキング的な業務は行っていません。会社自体が多額のお金をリスクを無視して投資して大穴を開けることはありません。もし経営破たんに陥るとすれば、経営コストが収入でカバーできなくなり、資金繰りが回らなくなることでしょうが、もうそういうことがあれば問題になる前に手数料を上げるなどして収入を確保するでしょう。

また、たとえリーマンブラザーズの例をとってみても、リーマンの株式に投資していた人(リーマンの株主)は痛い目に遭いましたが、リーマンの口座に株式やファンドを持っていただけの人は、リーマンが破たんしても自分の所有する株式やファンドをちゃんと取り戻しています。前に書いたように投資資産は投資家の所要物であり、金融機関の所有物ではないからです。

残念ながらリーマンの株主は、株式がほとんど価値のないものになってしまい投資していたお金をなくしました。下がリーマン株の株価チャートです。

株主は、投資額の一部を取り戻すために、集団訴訟を起こし会社役員、経営陣、監査会社などを訴えなければなりませんでした。時間も労力も要したわけです。これは、本題とはずれますがお金を投じる株式は分散投資してリスク分散を図ったほうがよいという典型例です。

まとめると、株式や債券など個別の投資媒体に関しては、複数への分散投資によるリスク分散は(あえて大きなリスクに賭けたいのでない限り)必須。しかし、それらの投資を置く金融会社については分散させる必要はないということです。

Print Friendly, PDF & Email

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください